‘シェイド’と言うと、つい「日陰」という意味を想像してしまいますが、「色合い、色調」という意味があります。あたたかみのある暖色の宿根草を組み合わせたホットボーダー(ホットシェイド)とやさしい雰囲気の寒色を組み合わせたクールボーダー(クールシェイド)。この時期、イギリスのガーデンセンターには、球根はもちろん、宿根草もセット売りが店頭にたくさん並びます。球根は原種チューリップ、スイセン、ムスカリなど、だいたい同じ種類が6株入りますが、宿根草は一つ一つ違った植物が6株入りになっています。そのセットにどんな組み合わせが入っているかと言うと。
ホットシェイドの植物
ポピー‘ビューティー オブ リバーメア’
ダイコンソウ‘ミセス ブラッドショー’/‘レディ ストラスデン’
ルピナス‘ザ ペイジズ’など
クールシェイドの植物
ポピー‘ロイヤル ウェディング’
ホリーホック‘チャターズ ホワイト ダブル’
レカンセマム‘ホワイト ナイト’など
原点はガートルード・ジキル
この、まるで絵を描くような植栽手法を提案したのは、ガーデンデザイナーの故ガートルード・ジキル(1843-1932)。この人なしに英国園芸史は語れません。画家だったジキルは、色だけでなく、形や質感までに気を配ってボーダーに植物を配置し、暖色と寒色を巧みに融合しながら、カラースキーム(色彩計画)を実行しました。その時代には、こんな便利な宿根草セットはありませんでしたが、今もこうしてジキルの植栽手法が受け継がれているのはさすがです。
著者プロフィール
白井法子
ケンブリッジ大学植物園での研修後、夫ともに再び渡英。
イギリス
『園芸ガイド』で「イギリス・ガーデニングレポート」を連載中。